全国47都道府県、水道水の硬さを1つの地図にした。そのうえで、「硬水の地域は心臓病が少ない」という、ありそうでなかった噂の真偽も確かめてみる。
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水の「硬度」は、水1リットルに含まれるカルシウム・マグネシウムの量。WHOの基準では120mg/L未満が軟水とされ、日本の水道水は全国的に見て軟水寄りが多い。ただし県内でも浄水場ごとにばらつきが大きいため、ここでは各都道府県の中央値(典型的な1本の蛇口の値に近い)で比較する。
硬水にはカルシウム・マグネシウムが多く、心血管疾患のリスクをやや下げるという疫学的知見が国内外にある。だとすれば、硬水の県ほど心疾患の死亡率が低いはず——横軸に硬度(中央値)、縦軸に心疾患による死亡率(人口10万対・令和3年)を置いて、47都道府県を重ねてみる。
硬水クラスター(千葉・埼玉・神奈川・東京)には共通点がある。日本でもっとも高齢化率が低い、若い都市部だということだ。東京都の高齢化率は22.1%で全国最下位(最も若い)、千葉・埼玉・神奈川も下位7位以内(全国平均28.0%)。心疾患は高齢になるほど急増する病気なので、若い県は水質と関係なく「見かけの死亡率」が低く出る。
そこで、年齢構成の違いを補正した「年齢調整死亡率」(厚生労働省・令和2年)に差し替えて、同じ図を描き直す。
硬水と心疾患のあいだに、実質的な関係はなかった。ただしこの回で伝えたいのは「硬水は健康に関係ない」という結論そのものより、都道府県別の統計を比べるときは、年齢構成の違いをまず疑うべきだということ。人口の若い都市部は、それだけで多くの「死亡率」が見かけ上良くなる。これは水質に限らず、地域の健康統計を読むときの一般的な注意点でもある。